女子力低い系

生活感のないアラフォー女子。仕事はIT土方。映画鑑賞記録と舞台鑑賞記録などを時々書きます多分。

トラッシュマスターズ「そぞろの民」観劇

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素晴らしい濃密な2時間半だった。ひたすら食い入るように観劇した。

何より脚本が凄まじく良い。しかも役者も隙のない演技派が揃っている。
何故私はこのような作家、このような劇団を今まで未見だったのだろう? 本日の観劇の興奮とともに、今まで見逃してきたことが悔やまれてならない。

安保法案はもちろん、昨今の日本の状況に少しでも問題意識を持っている人に強くおすすめしたい、必見の作品。秀逸な作品なので恐らく再演されるに違いない、しかし、それでは遅い。これは、安保法案が可決されてしまった「今」の思考で見て感じることに意義のある作品。

「現代」劇は数多くあるが、これは中でも現代の「今」に焦点を絞っている。
物語は、安保法案が可決された当日、ある年老いた父親が自殺することから始まる。「父親は何故自ら死を選んだのか?」遺された息子達、家族が対話を繰り広げるという家族劇だ。舞台セットは、超スーパーリアリズム。生活感のある台所と和室の居間がドキュメンタリーかと思うくらいに完全に再現されている。笑いの要素は皆無。勿論アクションもお色気もダンスも派手に煽る照明変化もムーディーに場面を盛り上げる効果メロディも皆無。場面は、日本家屋内での通夜の夜と翌朝。繰り広げられるのは対話のみ。全くもって地味な地味すぎる芝居である。では何がそこまで素晴らしい作品なのか? それは終始繰り広げられる「対話」であり「議論」である。あの国会では全く成立しなかった「議論」がここにはある。

これは家族劇の体裁をとっているが、作者が描きたいのは決して家族ではない。この一家族は、現在の日本社会の縮図として描かれている。主役はいない。作者は誰にも肩入れしていない。立場・発言・思想の異なる登場人物一人一人。恐らく観劇する側の立場・発言・思想によって、登場人物への思い入れは異なる。一種のリトマス試験紙のような。あなたは、このうちの誰の苛立ちにシンパシーを感じるか? どこの言葉に突き動かされるのか? あなたはこれから何を考えるか?

これを読んだ方にも是非観劇して欲しいのでネタバレは一切しない。
「利口な者は、沈黙する」「自主規制し我慢することが美徳」「協調性は大事だ」・・・そんなことを思っているのか、もの言わぬ平和主義者、事なかれ主義者。サイレントマジョリティの心理を鋭くえぐるカタストロフィがこの容赦ないディベート劇の終盤には待ち受けている。

涙がこぼれた。このような社会を作ってきた社会の一員なのだ私は。固唾をのんで見守る客席で静かに泣いた。

このような作品を観劇することができて、有意義な休日を過ごせた。機会があればもう一度観たいが。。。

 

TRASHMASTERS vol.23 『そぞろの民』作・演出 中津留章仁
2015/9/11 Fri — 9/27 Sun 全18ステージ @下北沢駅前劇場
http://www.lcp.jp/trash/biography/sozoro.html